旅の達人の特別な“飲み時間”教えます
酒とワタシと缶つまの最強な過ごし方【木村裕子さん編】

その人だけのリラックス法があるように、お酒だっておつまみだって、その人だけの組み合わせやとっておきの飲み方があるもの。そこで今回は、さまざまな旅スタイルを持つ注目の方々に、あなただけの特別な“飲み時間”とは? を聞いてみました。

お酒を開けたら列車に身を任せて
自分の世界にひたすら没頭します

木村裕子

過去4度に渡って「飲み旅本。」で“飲み鉄”の旅に出ている木村裕子さん。毎回、男前女子がマネしたくなる素敵なプランを教えてくれます。今回は、今までの旅を振り返るとともに、改めて木村さんにとっての特別な“飲み鉄”の魅力を伺いました。
 
――木村裕子さんにとっての“特別な飲み時間”とは?
 
鉄道に乗りながらお酒を飲んでいる時間です。食べ物や飲み物って場所によって味が変わると思うんです。例えば同じ料理でも、家で食べるのと公園で食べるのとでは何か味が違って感じたりするじゃないですか。場所もスパイスになるというか……だから、大好きな場所=鉄道と大好きなお酒が合わさることで、よりおいしく感じるんです。いつもよりもたくさん飲んだり食べたりしちゃいますね(笑)。
 
 
――“飲み鉄”ではいつも「缶つま」をお供に旅をしていますが、お気に入りのお酒との組み合わせはありますか?

木村裕子

Vol.1のわたらせ渓谷鐵道で飲んだ、「男山 純米生貯蔵」×「缶つま 広島県産 かき燻製油漬け」がすごく印象に残っています。缶つまの牡蠣がとにかくごろごろと大きくて! 男山はがつんとした味の日本酒なんですけど、缶つまと合わさることでまろやかになって、とても飲みやすい味になるんです。缶つまマジック、不思議だったなぁ。

 缶つま 広島県産 かき燻製油漬け

缶つま 広島県産 かき燻製油漬け

木村裕子

Vol.4で行った会津鉄道で、車内販売の“会津地酒セット”と「缶つま 北海道・噴火湾産ほたて燻製油漬」を合わせたのもおいしかったです。飲み鉄の撮影のときって、地元のお酒と別の地域の缶つまを合わせて食べることもあるので、列車に乗って実際に旅もしているんですけど、食べ物でも旅している気分になれるのがいいなって思います。

缶つま 北海道・噴火湾産ほたて燻製油漬け

缶つま 北海道・噴火湾産ほたて燻製油漬け

――今までの「飲み旅本。」での旅を振り返って、どんな思い出がありますか?

やっぱりわたらせ渓谷鐵道は一番最初に行ったこともあって、思い出に残ってますね。わたらせ渓谷鐵道って、パーフェクト・オブ・飲み鉄なんですよ。温泉もあるし、観光もできるし、ランチも地元産の舞茸がおいしい。駅弁スタイルのおじさんが、じゃがいもの塩ゆでとかきゅうりの一本漬けとか売りに来て。そういう地元ならではの素朴な風景も良くて、これから行く人にはぜひ楽しんでもらいたいポイントです。お酒もけっこう飲んじゃいました。缶つまのカロリーの低さにもびっくりした記憶があります!

木村裕子

それからVol.6のしなの鉄道。今まで観光列車がメインだったのですが、普通列車をクローズアップして“飲み鉄”をしたという意味ではチャレンジした回だったのかも。ちょっとディープな内容のプランになって、観光列車に乗らなくてもこんなに楽しめるんだっていう発見がありました! 自分と向き合える旅にもなりましたね。
 
 
――紹介する路線を選ぶ時のポイントはどんなところにありますか?
 
列車にも食べ物と同じで旬があって、夏に行くのがおすすめの鉄道もあれば、秋に行くのが良い鉄道もあります。なので、その時に旬の鉄道を選ぶようにしています。わたらせ渓谷鐵道とVol.2のJR小海線は、9月頃に行くのにぴったりだと思いますよ。夏と秋のちょうど境目の景色が見られるのが良いんです。わたらせ渓谷鐵道はトロッコだから密室空間にならないのもおすすめの理由のひとつですね。あとは、思わず写真を撮りたくなるようなかわいい列車や駅のある鉄道っていうのも選ぶ時のポイント。鉄道のひとり旅って、どうしても男性がするものというイメージがあるんですが、実は観光列車もあるし、足湯も買い物もできるし、景色もあって、女性が楽しめる要素がたくさん! そういうのを知ってもらえるようなプランにしています。

木村裕子

例えば、JR小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」は女子なら誰でも楽しめる、鉄板の列車だと思うんです。列車の中にドーム型のプラネタリウムがあるのはここだけなんですよ。星空を楽しむために作られた、コンセプト居酒屋みたいな雰囲気。独立したカウンター席なのもひとり旅にはありがたいです。
 
 
――“飲み鉄”を好きになったきっかけはなんですか?
 
“飲み鉄”って、普段は出合えないようないろんなモノに出合わせてくれるんです。それに気付いたのがきっかけですね。北海道の余市で「ウイスキーラムしゃぶ」と出合ったのが最初だったかな。鍋で温めたウイスキーでラム肉をしゃぶしゃぶするんです! そういう、その場所に行ってみないと知れない地元の食べ物やお酒に出合ったときの衝撃が楽しくって。駅や列車の車内販売ではそういう地元ならではのものが観光客用に売られていることもあるので、手軽に味わいやすいと思います。それから列車の中でお酒を飲んだり、駅でお酒を買っていると地元の人が話しかけてくれることも。それで仲良くなって、雑誌には載っていないような情報を教えてもらえたり! “飲み鉄”がいつも自分と何かを繋げてくれるんですよね。

あと、気仙沼で「もうかの星」というレバーのようなおつまみを食べたんですけど、なんだと思いますか? 正解は、鮫の心臓! 東京にいたらまず食べないですよね。旅に出るときはそういう変わったものを探して、チャレンジするようにしています。私の“飲み鉄”は体当たり系だと思いますよ(笑)
 
 
――最後に、“飲み鉄”の時間は木村さんにとってどんな時間ですか?

自分から自分へのプレゼント。自分を思いっきり甘やかす時間です。だからルールとかも作らずに、ひたすら自由に過ごしています。飲みたくなったら飲んで、眠たくなったら寝る、という風に、自分に逆らわないようにしていますね。列車に乗ってお酒を開けたら、あとは列車が目的地まで連れて行ってくれるので、自分の世界に没頭できるんです。手軽に日常とは違う世界に行けてしまいます! さっきの「もうかの星」もそうですけど、普段だったらチャレンジしないようなことも旅先だったら勢いでできる。“飲み鉄”に行くときは、帰ったらもう味わえない、と思って地元のお酒やおつまみを躊躇せずに試してみてほしいなと思います。

PROFILE

木村 裕子(きむら ゆうこ)

幼少期から鉄道が好きで、20歳の時JR東海で車内販売員に就く。2015年日本の鉄道全線完乗済み。著書に『女子鉄ひとりたび』(KKベストセラーズ)、『木村裕子の鉄道が100倍楽しくなる100鉄』(天夢人)。現在は名鉄カルチャースクールで講師も行う。

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