酒のためならどこへでも!
東海オンエアゆめまるの「のんべえ日記。」第4話

人気動画クリエイター・東海オンエアのゆめまるさんが酒の魅力を追い求め、西へ東へ駆けまわる酒連載。今回の注目酒は、ゆめまるさんが「最近ちょっと気になる存在」と語るクラフトスピリッツ。神奈川県・野毛にある国産酒専門のバー「びじゃぽん」を訪れて、クラフトの魅力とジャパニーズスピリッツの世界をのぞき見します。

撮影/古根可南子 文/藤村実里、石川葵

▶▶▶第4話―魅惑のクラフトスピリッツ―

全て国産酒! これぞ“THE ジャパニーズバー”

神奈川県横浜市の桜木町駅から徒歩10分ほど、“のんべえの聖地”ともいわれる野毛の繁華街を抜けた先に現れる趣溢れるバー「びじゃぽん」へ到着。雑多な町並みの中、1軒だけ異彩を放つ和な雰囲気に、ゆめまるさんの酒探究心もグングン上がります。
 
いざ、奥深きクラフトスピリッツの世界へ。

店内に入ると、これまた端正な顔立ちの店主・高橋さんが出迎えてくれました。店主のこだわりがつまった、ここ「びじゃぽん」は、取り揃えるお酒のすべてが日本産という“国産酒専門バー”なんです。
 
ゆめまる)すべて国産のお酒だなんて……すごい! しかもこの、お酒に囲まれている感じといい、雰囲気といい、酒好きにはたまらない空間でワクワクしてきます。
 
店主)ありがとうございます。ビールや日本酒のほか、ジン、ラム、ウォッカといったスピリッツ、それにアブサンなんかもすべて国産のものを取り揃えていますよ。

ゆめまる)日本酒や焼酎はその土地ごとのお酒、いわゆる地酒のイメージがあるけど、スピリッツで日本のものってあんまり出合ってこなかったな~。こんなにあることに驚きです。実は最近になって、日本のクラフトスピリッツに興味が湧いてきて。今日ぜひ覚えて帰りたいので、色々と教えてください!
 
前のめりなゆめまるさんに、店主も嬉しそう。ということで早速、店主イチオシのクラフトジンをいただきます。

<1杯目>上品すぎるジントニック

はじめに教えてもらったのは、神奈川県産のクラフトジン「THE JAPANESE CRAFT GIN黄金井(黄金井酒造/1杯1,400円)」。日本酒蔵で製造しているというこちらのお酒は、カボス、山椒、スパイスなど、神奈川県産のボタニカルがふんだんに使用されているそうです。
 
「おすすめの飲み方は?」と店主に伺うと、「自身のお好きな飲み方がおすすめです」とのことで、よく「ジントニック」を注文するというゆめまるさん、まずは馴染みの飲み方で味わうことに。ちなみに店主の粋な計らいで、お酒に添えてくれたライムもしっかりと神奈川県・横浜市産のものを用意してくれました。

ゆめまる)ゴクゴクゴク……えっ!? ちょ、いつも僕が飲んでいるジントニックとぜんっぜん違うんだけど! ビターで大人な味わいなんだけど、ものすごく繊細ですっきりとしていて、スッと入ってくる上品さがありますね。
 
店主)このジンは、地元産の食材にこだわって作られているお酒で、材料となるボタニカル、そしてジンの核となる「ジュニパーベリー」を自社製造の焼酎に漬け込んでいるんですよ。
 
ゆめまる)ジェ、ジェニファーロペス……?
 
店主)違います(笑) 「ジュニパーベリー」は、西洋杜松(ねず)の実で、これが入っていないとジンとは呼べないんです。重要なスパイスなんですよ。
 
ゆめまる)へ~! 勉強になる! 1杯目から衝撃が止まらないです(笑)

<2杯目>あの有名な焼酎「鍛高譚」がジンに!?

続いては、なんと焼酎でお馴染みの「鍛高譚(たんたかたん)」のジン。その名も「鍛高譚GIN(合同酒精/1杯1,100円)」です。代名詞ともいえるシソのベースはそのままに、ジンとなったお味は一体……! 今度はシンプルなソーダ割でいただきます。
 
ゆめまる)「鍛高譚」のジン!? そんなものがあるんですか!
 
店主)そうなんですよ。シソの風味はしっかりと活かしながらジンの良さも引き立っているお酒です。ストレートで飲むよりも、ソーダの方がより香りを感じられますよ。

ゆめまる)それじゃあソーダ割で、いただきます。わー、シソがめちゃくちゃ香りますね。すっきりしていて、美味しいです。和食に合いそう。
 
店主)そうですね。存在感のある味わいがあるのに料理の邪魔をしないので、お食事の際にいただくのも良いと思います。
 
同じジンでも1杯目とは全く印象が違う……! と、ゆめまるさんの酒エンジンはますますかかっていきます。クラフトスピリッツのみを楽しむつもりが、ここで何やら地元・愛知県の日本酒を発見。

<3杯目>地元・愛知のお酒に故郷愛が炸裂

店主とお話を楽しみつつ、ゆめまるさんがふと見つけたのは、愛知県岡崎市の酒蔵がつくる純米酒「二兎(丸石醸造/日本酒半合700円~)」。岡崎で収穫される酒米、萬歳七十米を使用し、米・水・蔵のすべてが岡崎産という、まさに地元愛溢れる一杯です。
 
ゆめまる)クラフトスピリッツを学びに来たけど……この日本酒もください!
 
店主)ぜひぜひ。地元のお酒との出合い、嬉しいものがありますよね。

ゆめまる)あぁ~うまい! 飲みやすい! 生まれ育った愛知の水や米が使われているからなのか、なんだかなじみ深さを感じます。安心する味……。「二兎」は、日本酒好きのメンバー・虫眼鏡に教えてもらって知っていたのですが、地元のものって意外と知らないこと多いですよね。僕の生まれ故郷・安城市にも「神杉酒造」という日本酒の酒蔵があるんだけど、実はつい最近知りました。やっぱり地元のお酒って見つけるとテンション上がりますね。
 
店主)来てくださるお客様も、地元のお酒だけど意外と知らなかった、と飲まれる方が多いですよ。「びじゃぽん」で思わぬお酒との出合いや、地元をより知れるきっかけ作りが出来たら嬉しいなと思っています。……それより、うちは毎週取り扱うお酒が違うので、今回ゆめまるさんが地元のお酒と出合えたのは奇跡です(笑)
 
ゆめまる)え、すごい!(笑) こういった偶然の出合いや、自分と縁のあるお酒と巡り合えるのは、国産酒専門バーだからこそできる楽しみ方ですね。

<4杯目>ジャパニーズウォッカの品格

ここからは、意図してか強めのお酒へ突入! 4杯目に選んだのは、岐阜県下呂市のクラフトウォッカ「奥飛騨ウォッカ(奥飛騨酒造/1杯1,100円)」をストレートで。

ゆめまる)今まで飲んできたウォッカって、喉に結構残る感じがしてたんだけど、これ……上品でスッと入ってくる!!! なんだろう、音で表すと「すんっ」て感じ(笑)
 
店主)ウォッカといえばロシアの荒々しいお酒のイメージがあるかも知れませんが、「奥飛騨ウォッカ」はお米をメインに作っているので、繊細な味に仕上がっているんです。
 
ゆめまる)へ~! お米……たしかに、口当たりがなめらかで少し甘みが残る感じもあります。
 
店主)初めて味わったとき、日本人がウォッカを作るとこうなるんだな……と感動しました。2006年に、当時首相だった小泉総理大臣からプーチン大統領へ日本のお土産としても選ばれたお酒なんですよ。
 
ゆめまる)大統領の贈り物に!? すごい経歴をもつお酒じゃないですか! ちなみに出されたときから思っていたのですが、このグラスめちゃめちゃ素敵ですね。

店主)ありがとうございます! 提供しているそのグラスも国産のものなんです。うちではお酒だけでなく、グラスもすべて国産のものを使用しているんですよ。

<5杯目>巻き起こる“オリジナルサワー革命”

店主)うちでは、オリジナルのサワーや酎ハイなども提供しています。日本ならではの“出汁”を使った「昆布ハイ」「梅昆布茶ハイ」「酢昆布ハイ」「燻製塩昆布ハイ」(各850円)の4種あります。ベースとなるお酒にもとことんこだわり、岐阜県養老町の「美泉ライスウォッカ(玉泉堂酒造)」を使用しています。

店主)出汁はお店で取っていて、日替わりで4種のうちどれかが味わえます。本日は「酢昆布ハイ」です。どうぞ!
 
ゆめまる)いただきます! ……え!? ちょーーーーーーーうまい!!!!! “ハイ界”で革命が起きてるよ、これ。出汁の旨味がすごい。

店主)出汁の旨味を楽しんでもらいたいので、ベースになるお酒もかなり試行錯誤して選びました。いろいろと検証した結果、この「美泉ライスウォッカ」がベスト! 出汁の旨味を邪魔せず、クリアなのに飲み応えもある一杯に仕上がります。
 
ゆめまる)超うまくないですか!? 感動!!! まじでみんなに飲んでほしい! ハート掴まれました。

<6杯目>真の酒好きがハマるハーブ酒「アブサン」

〆のお酒は店主と相談しつつ、いま密かにブームが起こりつつある「アブサン」をいただくことに。アブサンとは、ニガヨモギやアニスなどの薬草系ハーブとスパイスを主成分とするリキュール。「びじゃぽん」では現在、8種のアブサンを取り揃えているそう。今回は、岐阜県郡上八幡の「ファースト・エッシェンシャル ワームウッド グリーン・ジン(アルケミエ辰巳蒸留所/1杯1,800円)」を味わうことにしました。

ゆめまる)僕ね、アブサンは前にスペインの専門店で飲んだことがあるんですよ。その時、横にいたアメリカ人とベロッベロになるまで飲み明かして……スマホ無くした(笑)
 
店主)強いお酒ですからね(笑) こちらも50度あります。「辰巳蒸留所」さんは、辰巳さんという方がおひとりで始められた蒸留所なんです。
 
ゆめまる)ひとりで!? すごいな~できるものなんですね。これは大事に味わわなくてはですね。では、いただきます。

店主)いかがですか?
 
ゆめまる)あらっ! すごい飲みやすい。これまた今まで飲んだアブサンと違うな~~~。薬草の香りはするけど、まったく甘みがなくて意外とすっきりしてる。ほんと今回、同じ種類のお酒でも今まで飲んできたものとはまったく味わいが違うものばかりで、新しいお酒への扉が開いた感じです。

<おまけ>日本初のオリジナルテキーラ

 写真左/「雫 ブランコ」、右/「雫 アニェホ」

写真左/「雫 ブランコ」、右/「雫 アニェホ」

「びじゃぽん」では、4大スピリッツのひとつであるテキーラも味わうことが出来ます。テキーラの原料となるアガベを100%使用した、日本初の日本人プロデュースによるオリジナルテキーラ「雫(エルボラーチョ/ブランコ1杯1,300円、アニェホ1杯1,700円)」。日本人の方が現地メキシコで作ったテキーラです。
 
日本人が手を伸ばしにくいお酒というイメージがあるテキーラですが、「雫」を飲んで美味しさを知ってほしいという想いで作られたそうです。日本人が作るテキーラとの出合いはなかなか珍しいので、ぜひ「びじゃぽん」に訪れた際は試してみてくださいね。

「クラフトスピリッツとの出合いは、まさにロマン」

店主)クラフトスピリッツの世界、いかがでしたか? スピリッツは他のお酒に比べて少ない設備投資で始めることができるので、近年ではマイクロでスピリッツ造りを始める会社も増えています。老舗の日本酒蔵がジン造りに踏み出すケースもありますよ。
 
ゆめまる)知れば知るほど、飲めば飲むほど奥が深いです、クラフトスピリッツ! そもそも“スピリッツって海外のもの”という思い込みがどこかあったので、日本国内でクラフトスピリッツが造られていることがまず驚きでした。
 
店主)多彩な形で国産のクラフトスピリッツが登場してきているので、これからより出合える機会が増えるかもしれませんね。
 
ゆめまる)それはうれしい! 土地ごとのボタニカルにこだわって造られているっていうのが非常に面白いですよね。スピリッツを味わいながら、その土地への興味も湧いてきます。それに、繊細な造りや洗練された味わいはとても日本らしさが表れているな~と思いました。いやほんと、今日飲ませてもらったものすべて感動もんだった……高橋さんはどうやって国産のお酒を探しているんですか?
 
店主)常に新しいものがないかアンテナを張り巡らせています(笑) 最初の頃は、新しい蒸留所や酒蔵の商品が出るたびに追いかけていたんですが、最近では追いかけきれないほど国産のクラフトスピリッツが増えてきているんですよ。
 
ゆめまる)追いかけきれないほど、そんなに! でもこのお店、毎週ラインナップ変わるんですもんね。タイミングによって飲めるお酒が変わるのは、楽しいですね。そのとき出合ったお酒にも思い入れが出来そう。
 
店主)はい。お酒との出合いはまさに“一期一会”ですね。
 
ゆめまる)いや~、ロマンがありますね。“お酒との出合いは一期一会”か……そのセリフ、今後パクらせてもらおう(笑) それにしても、思った以上に奥が深いクラフトスピリッツでした。まだまだ知りたいし、僕も国産酒を追いかけていきたいです! 1つ言っていい? 高橋さん、岡崎にも店出しませんか?(笑)
 
 
計6杯をいただいて、ジャパニーズクラフトスピリッツにすっかり魅了されてしまったゆめまるさん。愛知県・岡崎に「びじゃぽん」さんが出店してくれることを切に願いつつ、後ろ髪ひかれる思いで店を後にしました。次回は独特の魅力がある街・野毛のディープな飲み旅をご紹介。「のんべえ日記。」第5話もお楽しみに!

本日の酒場「びじゃぽん Villapón」

日本酒や焼酎、ビール、ワイン、スピリッツのすべてが“日本のお酒”という、国産にこだわり抜いた国産酒専門バー。珍しいお酒を数多く取り揃えているため、全国から通う人も多いという名店です。店主・高橋さんが自ら選定する国産酒は日替わりで仕入れるため、その日にしか出合えない貴重なものも。女性ひとりでも気軽に来店でき、1杯から楽しめます。
 
店名/びじゃぽん Villapón
住所/神奈川県横浜市中区宮川町2-28 前田ビル1F
電話番号/045-243-2121
営業時間/19:00~24:00
定休日/日曜日
※4名以上での来店の際は要事前予約

PROFILE

ゆめまる / 東海オンエア

愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組動画クリエイター「東海オンエア」のメンバー。てつや、しばゆー、りょう、としみつ、ゆめまる、虫眼鏡からなるグループ。個性溢れるネタ動画を中心にさまざまなジャンルの動画を投稿し、人気を集める。2016年には「岡崎観光伝道師」に任命されるなど活動の幅を広げている。また、ゆめまるは2020年に自身のアパレルブランド「Bark at the Moon」も立ち上げた。メンバーの中ではかなりのお酒好きとして知られている。

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