鉄道アイドル・木村裕子の
ほろ酔い飲み鉄紀行~わたらせ渓谷鐵道編~①
秋風に誘われるまま切符を買って、お酒とアテだけをバッグへ。流れ行く景色に乾杯する度にココロがほぐれていきます。鉄道アイドルの木村裕子さんが、そんな理想の飲み鉄旅を体験。木村さん、酔い加減はいかが?
Photo/MIZUAKI WAKAHARA Styling/MARI SHINODUKA Text/ASUMI HACHIYAあまり歩かない飲み鉄は酔っても安心です(笑)
「私にとって鉄道は『人と人を結ぶ赤い糸』なんです。列車に乗れば、いまの自分が必要としている人や場所に連れて行ってくれるから」
国内全線完乗を果たしてしまうほど鉄道が大好きな木村裕子さん。鉄道趣味でいうところの「乗り鉄」に分類されます。旅はもっぱら1人で行くことが多いそうで、理由は1人のほうが「人との出会い」が多いからだとか。
「1人で旅をしていると、いろんな人が話しかけてくれたり、困っている時に助けてくれたりするんです」
そんな木村さん、かつて特急列車で車内販売員をしていました。
「お客さんはお酒を買われることが多いんですけど、特に女性には、地酒のカップ酒、それも清酒ではなく原酒がよく売れました。みんな人には言わないだけで、列車でお酒を飲むことに興味はあったんじゃないかなと思います」
実際に自身もお酒が大好きで、旅先や列車のなかで、地酒や地ビールを飲むことが多い一方、「家での一人飲み」はあまりやらないそうです。
「家で一人飲みをしていると、寂しくなってくるんです(笑)。でも列車だったら、他人だけどもみんながいるという安心感もあるし、お酒を持っていると仲間に入れてくれることもあって楽しいんです!」
お酒を介した一期一会、これもまた「人との出会い」のひとつかもしれません。
今回、木村さんが旅の目的地に選んだのはわたらせ渓谷鐡道。トロッコわっしー号に乗り込み、おすすめの駅を4つ、巡ってもらいました。バッグにはお気に入りのお酒とおつまみを詰め込んで、「飲み鉄」仕様です。窓ガラスのない開放的な車内には、列車の走行音が響きます。道中、木村さんが思わず漏らした「おいしい!」という声は、テーブルに広げたお酒やおつまみだけでなく、豪快な水流をたたえる、渡良瀬川や一面に広がる花畑に対する感想でもあったのではないでしょうか。ここに来ると、景色も何もかもがごちそうです。
ちなみにトロッコわっしー号は、車内にお手洗いが設置されているため、少々飲みすぎてしまっても大丈夫。また、トンネル内などで少し肌寒さを感じた時は、併結されている窓ガラス付きの車両に移って引き続き宴会を楽しむことができます。
「今回、降り立つ駅でも改札から出ず、列車内での一杯を中心とした旅をしてみました。あまり歩かないから酔っても安心でしたし(笑)、ローカル線ならではの魅力的な駅舎がたくさんだったので、改札内で十分楽しめましたよ! 飲み鉄の新たな楽しみ方を発見しました。読者のみなさんにもぜひ楽しんでもらいたいです!」
今回旅したのは「わたらせ渓谷鐵道」!
わたらせ渓谷鐵道は、群馬県桐生市の桐生駅と栃木県日光市の間藤(まとう)駅を結ぶ全長44.1kmの路線。渡良瀬川に沿って走る列車の窓からは四季に応じた自然を満喫でき、秋の紅葉シーズンはたくさんの観光客が訪れます。東武鉄道・特急りょうもう号で浅草駅から105分と、都内からのアクセスも抜群で、気軽な鉄道旅におすすめ。最近では、ゆるキャラ「わ鐵のわっしー」も大人気。愛嬌ある表情がそのままデザインされた「わっしーはらまき」やぬいぐるみなど、各種グッズも充実していて、お土産にも困りません。
木村 裕子(きむら ゆうこ)
幼少期から鉄道が好きで、20歳の時JR東海で車内販売員に就く。2015年日本の鉄道全線完乗済み。著書に『女子鉄ひとりたび』(KKベストセラーズ)、『木村裕子の鉄道が100倍楽しくなる100鉄』(天夢人)。現在は名鉄カルチャースクールで講師も行う。